障害のある人の航空機の
利用等に関する問題点
文化体育部長 久保 親志
近年、急速に障害のある人の利用頻度が高くなってきた航空機や空港等の利用について、見直すべき問題が山積みしています。今回、交通バリアフリー点検活動で福岡空港をチェックすることにより、障害のある人の航空機等の利用に関して、抜本的な見直しが必要であることが明らかにされました。
障害のある人に対する航空事業者の対応は必ずしも、正当な乗客に対する対応とは呼べないものがあります。時には安全性が強調されるあまり、障害のある乗客に対して慇懃無礼な態度で権利の制限や自由の制約を強いることすらあります。そこで、今回、障害のある人の航空機の利用等に関する問題点を例示列挙して見ることにしました。
T.空港係員の接客態度に関して
@チケット発行システムについて
チケットを購入する際に、必要以上に障害名や部位を尋ねられたり、身体の状態を聞かれたりすることがある。仮に障害者割引の適用に関連してのことであれば、障害者手帳の提示を求めればよいことであり、窓口で直接障害名を聞く必要はないと思う。
例を挙げれば、起立ができるか、また、支えれば歩行は可能か等と尋ねれば、全く立てない、歩けない等の、応答があると思う。
A事前の通知・登録、待ち時間等の問題
ある航空会社では、搭乗当日に直接カウンターに来るのではなく、事前にプライオリティ・ゲストセンターへの登録を要請している。円滑な利用やサービスを求めて事前に連絡をするのは利用者側の判断に任せるべきであり、航空事業者側の都合から一方的に求められるべきものではない。
空港に入る時間も「特別旅客」の名の下に通常より倍近い時間が要求される。具体的には、国内線では1時間、国際線では2時間前にチェックイン・カウンターに行かなければならない。手続き等で一般乗客より多少多くの時間が必要なことは理解できるとしても、一律的に搭乗時間の指定を求められることはまったく不合理である。
Bチェックイン・カウンターでの対応に関して
ここでも身体状況に関して不必要と思われることを尋ねられることが多い。航空機内でのサービスに必要なことであれば、その旨を明確にして、身体の状況を聞くべきである。また、カウンターでもっとも大きな問題点は、車イスの乗り換えを強制されることである。日常的に使用している車イス、電動車イスは、車イスの使用者にとっては、身体の一部のようなものであり、どうしてもやむを得ない時以外は離れたくないものだ。まして、長い通路を身体に合わない車イスに乗せられて運ばれることは苦痛だと思う。車イスの格納に時間がかかることで、早めに別の車イスに乗せ換えておこうという業者側の都合で乗客に苦痛を強いて良いということにはならない。
また、事業者の用いる車イスのシートは固く脊髄損傷者には不向きである。更に、移乗し易すいように改善の必要もある。
C付添人の有無による搭乗制限
障害のある人の航空機利用に際しては付添人の同行を絶対的な条件にする航空会社もある。付添人がいないということで搭乗を拒否されたケースがある。具体的なものとしては、車イス使用の障害のある人が友人と一緒に海外旅行に行き、帰りは一人で帰国しようとした際に、搭乗を拒否された事例もあるという。
また、車イス使用の障害のある夫妻が子供連れで航空機を利用しようとした際に、同じように搭乗を拒否され、付添人の同行を求められた話も聞いている。今後、ケースバイケースで単独搭乗できるようにすべきだと思う。
D航空機一機あたりの搭乗人数制限
車イス使用者が団体で航空機を利用しようとする場合、航空機の非常事態に備えて一便に利用できる人数を制限している会社が多い。航空機の緊急脱出口の二倍以内を制限人数としている場合が多いとのことだが、スポーツチームの移動や団体旅行等の集団搭乗の際にトラブルになるケースがある。
一便6人〜10人程度搭乗が妥当だと思うが、乗り降りの時間等や非常事態の避難処置を考えると止む負えない点がある。また、団体行動の場合は事前打ち合わせ等、団体側も留意すべきであり、解決策が待たれる。
U.座席等の機内設備の問題点
@トイレ等の設備に関して
航空機においてもっとも大きな問題は、先ずトイレの狭さがあげられる。機内用車イスでトイレの場所までは行くことができても、便器への移乗に介助を必要とする場合には、トイレ利用は無理である。そこで、事業者の合理的配慮義務として、トイレスペースの拡大が図られる必要があると思う。
A障害のある人の座席の指定及び対応
車イス使用者に指定される座席は、通路側に面する座席の肘掛けは跳ね上げ式にする必要がある。肘掛けが固定式の場合には、肘掛けを超えて移乗しなければならず、身体全体を抱えあげる介助は負担が大きく危険である。
以前は障害のある人の座席は一番窓際の場所とするとなっていたと聞くが、昨今は、利用者の意思が尊重され、窓際、通路側どちらでも選べるようになっている。ただし、車イス使用者が二人横に並んで座ることは原則的に認めないとのこと。
V.約款・規約の見直しと法整備
車イス使用者をはじめとする障害のある人に対する基本的な対応は、航空事業各社の約款等で定められている。付添人規定や一機あたりの障害のある人の搭乗人数などが定められており、その内容には、搭乗拒絶など障害のある人の権利を制限し、人権侵害になりかねない規定も含まれている。
航空機の安全で円滑な利用と障害のある利用者の意思の尊重を保障するには、「航空業者アクセス法」といった特別法の制定が必要だ。更に、法策定の過程には、当然に障害のある人が参画した法制定に対する検討が不可欠であると考える。
以上
(福岡空港送迎デッキにて、空港チェッカーが全員集合!)
(広報誌「わだち」No.110より)
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