支援費制度の危機
支援費制度が導入されて3ヶ月が過ぎようとしていますが、支援費制度の根幹を大きく揺るがしかねない現状が膨らみつつあるのをご存じでしょうか。ある大手の介護保険事業者は、高齢者で身障手帳を所持している人をターゲットにし、支援費を高齢者にも利用させようとしています。その動きは他の介護保険事業所も追随の構えのようです。対象は措置制度の時にも障害者のホームヘルプを使ったことない人がほとんどのようです。(注=支援費制度が導入されるまで地方では障害者のホームヘルプまで手が回らない状況があり、障害者のホームヘルプはほとんど事業化されていないし、また、左記のような理由により利用する人も極わずかでした。また、介護保険における身障ヘルパーの併用は、以前から身障のホームヘルプを利用していた人に限られていたので、身障ホームヘルプを併用する介護保険対象者も極わずかでした。)
しかし、支援費制度導入後、介護保険制度と支援費制度の併用が措置制度の時に比べ、かなり緩やかに、というより市町村の担当者がわからないまま、今まで身障ホームヘルプを利用したことのない高齢障害者にも手帳を所持しているというだけで、支援費を支給している現状が見受けられます。
そのことにより、どのような現象がおきるかというと、当然実績として支援費制度は有効利用されていると判断されるでしょう。しかし、本当に支援費制度を必要とする重度障害者に十分な支給量が支給されているかは、全体の実績では全く見えてきません。このような事業所の経営戦略を放っておくと、支援費の予算はすぐ食いつぶされ、本当に支援費を必要としている重度障害者に支援費が回らなくなるおそれがあります。
高齢者でも本当に支援費を必要としている人はともかく(そのような人はすでに併用しているはずです)、現在事業所が介護している高齢者が支援費を取れば労せず収入が増えるわけであり、なおかつ、大変な介護を要する重度障害者は避けて、介護が楽で扱い慣れている高齢障害者を支援費でまかなえば、支援費の事業の実績は重度障害者を抱えている事業所と同じように上がるわけです。介護タクシーの二の舞になるおそれがあります。
このよう実情をふまえ厚生労働省は事業所に対し、高齢者で身障手帳を所持している人へ安易に支援費制度の申請を促さないよう警告をすること。さらには介護保険対象の高齢者に支援制度を申請する理由のみで、新規に身障手帳を取得するよう促さないよう警告すること。
さらには、支援費制度が導入されてから65歳以上の高齢障害者が支援費制度に占める割合がどれくらいなのかまた、65歳以上の身障手帳の取得伸び率を支援費制度導入前後で調査すること。また、介護保険事業者の支援費制度利用者の対象者年齢等を調査すること。以上のデータを元にして早急に対策を講じる必要があると考えます。
(大里 恵)
(広報誌「わだち」No.119より)
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